公務員獣医師の現場から考える未来の採用と組織のあり方

公務員獣医師という職種は、食の安全から動物愛護、公衆衛生まで幅広く市民の暮らしを支えていますが、近年、その専門職確保は全国的に厳しい状況が続いています。福岡市が公表した獣医学生向けインターンシップは、実地体験を通じて将来のキャリア選択を促す取り組みの一つです。なぜこの小さな接点が、これからの行政の持続可能性を左右する重要な社会設計として映るのでしょうか。

何が起きたか

福岡市は、令和8年度の獣医学生を対象としたインターンシップ募集を開始しました。対象は獣医学部の学生で、食肉衛生検査所、動物園、動物愛護管理センターという3つの現場を巡る3日間のプログラムです。実務の体験を通じて、公務員獣医師としての業務への理解を深めるとともに、市への就職を検討するきっかけ作りを目的としています。

なぜこの話が大事なのか

専門職の採用は単なる「欠員補充」ではなく、地域の公衆衛生水準を維持し続けるための「未来への投資」です。行政の現場では、獣医師のような専門職が退職や定年を迎えた際、民間企業との採用競合や志望者減少により、代わりを見つけることが困難になりつつあります。このインターンシップは、単なるPR活動を超え、学生と現場職員が直接対話することで、公務員として働くことの「やりがい」と「現実の課題」を正しくマッチングさせる重要な対話の場となる可能性があります。

今の社会のどこに歪みがあるか

専門職の採用が難航する背景には、学生が抱く「公務員=堅苦しい」「ルーチンワークばかり」といった古いイメージと、現場が抱える「慢性的な人手不足による業務過多」という構造的な乖離があるかもしれません。限られた予算と人員の中で、制度を維持することに追われ、次世代に対して「この現場で働くことで、どんな社会課題が解決できるのか」という物語を語りかける時間が失われてきたのではないでしょうか。また、委託業務の拡大やデジタル化の遅れが、専門職本来のやりがいを削ぎ、組織の魅力を低下させている可能性も否定できません。

どう変わると幸せか

もし行政が、単なる「職場」ではなく、専門性を磨きながら地域課題の最前線に挑める「フィールド」として可視化されれば、優秀な人材の獲得競争は変わるかもしれません。学生のうちから現場のリアルを知り、働く人と繋がりを持つことで、不安が期待に変わり、入庁後のミスマッチも防げます。職員にとっても、指導を通じて自身の業務を見直す機会となり、組織全体に新しい知見が循環する未来が描けるのではないでしょうか。

今できる一歩

まず、現場の職員や議員の皆さんは、自分たちの職場が「外部からどう見られているか」を一度フラットに眺めてみてはいかがでしょうか。特定の専門職に限らず、採用広報の場を「募集告知」から「社会課題をともに解決するパートナーへの招待状」へと変えることは、今すぐ着手できる重要な一歩です。ベンダー側も、採用管理システムや広報ツールを提供する際、単なる効率化だけでなく、こうした「想いを届けるためのコミュニケーション設計」を支援する視点が求められています。現場の小さくとも前向きな接点こそが、行政の未来を形作る種となるはずです。

情報元: 福岡市役所での獣医学生インターンシップについて